プロジェクト

ある日、結婚式の招待状を受け取った。

結婚式まで10日を切っているのにもかかわらず、結構フォーマルな結婚式のようでドレスコードがあるという。

もしかしたら結婚式に呼ばれることがあるかもしれないと聞いていたので、日本からワンピースを持参していた。日本のカジュアルな2次会とかにも着ていったから、これで大丈夫だろうと思っていたのだ。

しかし、その気になるドレスコードとやらを聞いてみると「ロングドレス」で「黒以外」だという。……一つ目で既に引っかかっているし、そのワンピースは色も微妙に黒めなんである。知らんかったことにして許してもらおうか、どうしようか、と悩んだ。そして、同僚の友だちとドレスを一応お店に見に行ったのだが、「安いお店だよ」と聞いていたにもかかわらず、ため息しか出ない。

なかなか4時間やそこらの時間しか着ないであろうものに大金をはたく余裕はない。我々の悩みは深くなるばかり。

その悩みを、遊びに来てくれていたあけみちゃんに相談した。あけみちゃんは、日本で服飾の仕事に携わっている人だ。だから、ロングドレスとはなんでっしゃろう、という相談に始まり、インターネットでどんなもんじゃーい、というのを検索。そして、話は転がりに転がって、あけみちゃんにドレスを作ってもらう、ということになった。

すでに、メヒコの布屋さんの事情はあけみちゃんも知っていたので、簡単なドレスなら作れるんじゃなかろうか、ということになったのだ。インターネットを見て、「こんなのだったらできるかも??」とあけみちゃんが言ってくれたのを「まじで!!!」と真に受けて、本当に厚かましい話だが、日本がゴールデンウィークだからとメヒコに遊びに来てくれたバケーションのお方に「服を作ってもらう」という大仕事を頼むことになった。

この日を境に、一週間しかないあけみちゃんのメヒコ滞在のルーティーンに6時半に仕事終わりの私とアエロメヒコの前で待ち合わせて「プロジェクト」をすすめるというのが加わった。

1日目。まずは布屋さんに足を運んで生地選び。棒にぐるぐる巻きになった布の林をかき分け、ひっぱりだし、体に巻きつけてみる。服屋ではないから鏡はないからiPhoneで写真を撮りながら、ああだこうだと作戦会議。ここがメヒコでよかった、と本当に思った。布天国メヒコでよかったーーー!!種類(デザイン、色、素材全てが)豊富なことと、値段がお求めやすいというところが本当に財布にやさしい。エレガントなパーティに呼ばれて、金銭的な全力は尽くせないから、できる限りのことをしようと、そして布を選び出したら私もあけみちゃんもなんだか、いい意味で振り切れてやけくそとはまた違う謎のテンションが湧きあがってきた。そして、最終的に選んだのが草間彌生の作品をほうふつさせるようなドット。ドットはもともと好きなパタンなのでドットのシャツやら服やらはすでに持っていたけど、赤と白の、き、奇抜じゃ~!!というドットに、最初は笑いながら合わせていたけど、そこは振り切れた2人、

「いや、これいいで」

ということになぜかまとまり、草間風ドットで行くことに決定。胴体のところに入れるゴムを見繕い、ミシンもないので、手縫いでも十分な強度が保てるような糸を購入。家で採寸し、だいたいの長さを決定し、布にはさみを入れる。待ち針すらろくにないので、縫い針を待ち針代わりに使わせて、本当、迷惑かけます……と頭が上がらない思いで1日目が終了。

2日目。仕事を終えた私と、だいたい縫えたというあけみちゃんは、「靴や!!!今日は靴がいる!!!」と靴屋さんをめぐることになった。「あかん!!全然あかん!!!」を連呼し、疲れたのでいったん家に帰って、あけみちゃんが縫ってくれたドレスを見てみて、どういう靴が合うのかを検討しに変えることに。

あけみちゃん!!!!!

すごい!!すでにそれしかいうことがなくて、昨日ただの布っきれだった草間布は、服の体をなしていた。やはり、職人。そしてとりあえず試着してみて、なんだかいけそうな気がするー!!とまたもや不思議なテンションが湧きあがってきて、再び靴屋を巡る旅に出かけた。

そしたら、普段でも履けそうなころあいのいい靴があって、ヒールはなかったけど、ドレスで隠れるから足元は見えまい、とそこは「普段でも使えそう」というポイントを押させてもらった。そして、靴が手に入ればもう気持ちが一気にでかくなって、ポソレを食べよう~!!とおいしいポソレ屋さんで祝杯を挙げる。(何の?!)

家に帰って、あけみちゃんは決定した長さに裾を合わせる作業+あまり布でコサージュを作る作業。黒いカーディガンがあるからそれを羽織ろう、という作戦になっていて、いざ羽織ってみると、丈が長くてダサかった。ということで、急きょボレロのような丈にするべく、私はカーディガンを縫うという作業をすることになった。あけみちゃんの、でかい目で縫った方がいいという指導に従いチクチクと針を動かした。

本当に正式な結婚式に行くのだろうか。正式(しかもエレガント)な結婚式にこんな手作り女が参列していいのだろうか、という疑問と、大丈夫なんだろうか、という不安がないことはなかったが、「爆裂に何かをつくっている」「着々と目に見えて形になっている」「そして何だか知らんが、楽しい」というこの事実だけが私たちの謎のプロジェクトを動かし続けていた。

3日目。やっぱり、アクセサリーがいる!!ということで、アクセサリーを買いに出かけることにした。もちろん集合はアエロメヒコ前。6時半に到着したかったのだが、私が遅れて到着。なんか、ファストファッション的なお店であるだろう~!!と探し始めたのだが、これがなかなかない。

最後に、ここにはないだろう、でも一応、とはいったお店で、2人の中で思い描いていたのに近いアクセサリー(しかも、ネックレスとピアスのセット)があったので、うお~~!!ありがたいーー!!と購入したところで、すべての装備品はそろった。

「でも手縫いだからね~。あんまり動くと危ないかも」

と言われたので、

「わかった。動かへんし、目立つようなことは一切せえへんから!!もう、斜に構えて手を前で組んでしれっとした顔して隅っこに立っとくわ」

と言って、笑った。結婚式はまだなのに、この時にすでにものすごい達成感。何かに全力を(体力も知恵も技術も)使って、たどり着きたかったポイントまでたどり着くと、めちゃくちゃ楽しい気持ちになる。それを再確認した気持ちだ。改めて言うが、あけみちゃんは日本がゴールデンウィークで仕事が休みなのでメヒコに遊びに来てくれたのである。それなのに、日本にいる以上に働かせてしまって本当に申し訳ない。

でも、ほんとうにほんとうに大感謝。


あけみちゃん、ありがとう~~~!!

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