アバストス


オアハカで最も「カオス」なエリアの一つとしてあげらるのは、Mercado de Abastos(アバストス市場)だろう。

数年前、オアハカに旅できたときにはアバストスに行った記憶があるし、写真もしっかりと残っている。それらのに、今回オアハカに来てからは全然足を運んでいなかった。

そのくせに、学校でオリエンテーションを行うときに「危ないエリアなんでね、あんまりオススメはしません」とか言っていた。足を運べていなかったのは、自分が怠け者だったとしか言いようがないのだけれど、先日オアハカを案内する機会があって、案内していた人にアバストスのことを伝えると、「ぜひとも行ってみたい」とのこと。行きたいと言われれば、案内するしかないのでたぶんこの辺を曲がるだろう、と野生の勘にまかせて向かった。

するとやっぱり行ってみるとカオスなんである。圧倒的な物の数。圧倒的な人の数。

いりそうなものも、いらなそうなものも、売れそうなものも、売れないだろうものも、すべてがいっしょくたになって陳列されていて、そういう雰囲気の中で人の間を縫って歩くのは楽しい。

それがきっかけで、やはり自分の目で見ないとだめだ、という当たり前のことに気がついて、別の日に再訪した。

その日は土曜日で、アバストス市場の周りでティアンギス(青空市場)も開催される日だったので、一週間のうちで最もにぎわう日であった。早速ピエロに、

「ジャパーン??」

と話しかけられた。彼は、どうやらお菓子の問屋の呼び込みをしているようだ。「そうです。ジャパンです」と不愛想に小さな声で答えて振り切ると、

「オ~!!トウキョウ~~!!」

と絶叫する声が背後で聞こえた。少しでも商品に手を触れようものなら、

「さぁ、なにを買うんだ!!」

と声をかけられ、去ろうとすると

「おい、何がいるんだよ?!言ってみな~!!」

と声が飛びかかってくる。この混沌具合は、観光客がひしめく歴史的地区にはない雰囲気で、漂っているものと言ったら生活感以外の何物でもなかった。そんなところでびくびくしていても仕方がないので、ぐんぐんとメルカードの深層部に歩みを進めていった。

各お店(屋台のような仮設)の間はなく、ひたすら店が続くので、方向感覚を失いやすく、自分がどこにいるのか分からなくなりそうである。でもずんずんと進んでいく。DVDゾーン、服ゾーン、下着ゾーン、セニョーラご用達のスカートゾーン、工具ゾーン、キッチン用品ゾーン、ガラクタのようなフリーマーケットゾーン、ベッドゾーンなどを通り抜けたら今度は果物や野菜がいっぱい。野菜や果物の安さには本当にびっくりしてしまう。キロ単位でしか売ってくれないのが独り者には辛いところだけど、これは、と思うものを買ってすっかりエコバッグはパンパンに。

その後もうろうろしていると、家具ゾーン、陶器ゾーンなどに突入。家具ゾーンでは、職人さんと思われる人たちが店番をしながら、その脇で今まさに椅子に色を塗っていたり、机をつくったりしている。

これだけ人がいて、ものがあふれているのにやはり平和な時間の流れる場所というのはあるもので、暑いのでパレタ(アイスキャンディ)をおっちゃんから買ってその陽だまりのような場所を見つけた。そこでしばらく腰を下ろしてアイスを食べていると、おばちゃんがこちらを見てにっこりと笑っていた。そしてゆっくりと自分の店開きをしていた。売る気があるのだかないのだか、よくわからないけど陶器を数点並べて、自分は椅子にちょこんと腰かけていた。

腰を下ろすと歩いているときよりも目線が下がって、そして自分は止まっているから人の流れがよく見える。さっきまでカオスじゃ~~と思いながら歩いていたのがうそのように静かだ。

そこでしばらく休憩してから、今度は家路についた。

そして、最後にあのピエロにまた出くわして、「ウエルカ~ム、トウキョウ~~~!!!」と絶叫されてアバストス市場を後にした。

……でも、アバストスはただのカオスエリアではないことが再確認できたので、またふらりと遊びに行こうと思う。これからオリエンテーションでも、アバストスのことを説明するときはちょっと今までとは違う言い回しを使うだろう。やはり、自分で経験することが大切だな。

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