San Antonino①


オアハカは、郊外の村を訪れるのが楽しいのだけど、私は実はまだあんまり出かけられていない。土曜日まで仕事があるので、唯一休みの日曜日はどうしてもだらだらと過ごしてしまうのだ。

お昼くらいに、さて、今日は出かけてみたろか知らん、と腰を上げようもんなら、すでに太陽が昇り切ってしまって、なにもこんな暑いときに出かけへんでもな、と結局家近辺でのらりくらりと過ごして終了というわけだ。

そんな私の重い腰をひょいっと持ち上げてくれたのは、日本から遊びに来てくれた友だちである。彼女はあけみちゃんといい、鹿児島のバックパッカーで

「ここってドライヤーあるんですかねぇ?!」

とかいう会話をきっかけに知り合った旅先友だちである。旅先友だちとはいえ、前回メヒコに住んでいた時にも冬休みを利用してきてくれたから一緒に旅をしたり、東京に行った際には連絡を取ってご飯を食べに行ったりと何かとつながりのある彼女である。だから、あけみちゃんと会っても常に久しぶりに会ってもあまりそのような感じがせず、いつも旅の続きのような気持ちになる。

さてそのあけみちゃん、服飾を仕事にしている職人さんの一面も持っている。私のオアハカ行きを伝えると、オアハカの刺繍にめちゃくちゃ興味を示していて、今回「この村の刺繍が見たい!!」と調べてきていた。せっかく調べてきたのなら、ほんならまぁ、行ってみようー!!と足を運んだのが、このSan Antoninoである。

クーラーをガンガンに聞かせたバンに揺られること1時間弱。大きな道路沿いに降ろされて、その後町の中心に向かってかげを求めて壁に吸い付くように歩く。オアハカ市内とは雰囲気が全く違う。ちょっと埃っぽくて、目で見ただけでも空気が乾いているのがわかる。


こういう田舎町に来ると、壁の絵のユニークさはエンジン全開である。筋肉質な歯ってどうよ。顔のまんがらしい感じとは対照的に筋肉のリアルな仕上がりといい、メヒコっぽさしか感じない。


オアハカ郊外ではトゥクトゥクが走っているのをよく見かける。なんか、トゥクトゥクは東南アジアを走っている、というイメージだったので妙な新鮮味と違和感を感じるが、タクシーに乗るよりも近距離を手軽に利用されているようだ。


中心に向かって歩いていると、花嫁らしき人を発見した。教会で結婚式があるらしく中に入ってみると、今まで見たことないような珍しい祭壇にびっくりした。真ん中に、ヒツジがででーんと座っているのである。オアハカでは、キリストではなくて聖母が祀られている教会は割に見かける気がしていたけど、ヒツジは初めてだ。

最初は椅子にのんびりと腰かけていたけど、次第に人が教会に集まりだし明らかに部外者な私たちは居づらくなってしまい徐々に後退。パイプいすもあほほど並べられていて、その最後列なら大丈夫だろうとパイプいすに腰掛けていたけど、最終的に村の子どもが全員集まってきたんではなかろうか?!というくらいたくさんの子どもがわらわらと集まってきて、なにが行われているか既に見えないのだけれどもミサが始まってしまった。


後ろから見ていると、女の人はみんな髪の毛が長かった。おばあちゃんとかも長い髪の毛をきれいに三つ編みしてあって、みんなチェックのエプロンをしていてものすごくかわいい。「おばちゃんの格好のデフォルト」といった感じで、民族衣装ではないけれど、完全にこれはメヒコおばちゃんのアイコンになるなぁ、と思った。

さて、結婚式。区切りのよさそうなところであけみちゃんと目を合わせて、コクリ、とうなずいて後にした。この村では結婚式を挙げるときは、このように村全体でお祝いするのだろうか。あけみちゃんは実は後日再びこの村を訪れるのだが、その時はこの教会にはヒツジは居なかったそうだ。

この教会とヒツジ、というよりは、結婚式にヒツジが関係するのだろうか。いやぁ、不思議だったなぁ。(まだ言うてる。)

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