San Antonino②


さて、腹ごしらえを、と思い向かったのがここ。食堂の名前はわからないけど、暑い中さらに熱いコマル(陶器のフライパンのようなもの)の前で、おばちゃんが一生懸命作っているのが外から見えて、「絶対においしい」確信があったのだ。

おばちゃんはエンパナーダス(大きなトルティージャの上に、モーレを縫って二つ折りにして焼いたもの)をひたすら作っていた。

「これ、なに??」

と聞くと、ていねいに教えてくれる。

「本当はね~、木のやつがいいんだけどね~。(トルティージャを丸く伸ばす器具)めっちゃ力がいって大変だから、今はこの鉄製を使っているんだよ。」

ひとつひとつ丁寧に説明してくれて、私たちがわからなさそうだったら実演で見せてくれる。そんなことをされては、食べる前からうきうきだ。

なぜか店のBGMは宗教チャンネルっぽいのが流れていた。ベネディクト16世と、現ローマ教皇なのか一体誰なのかよくわからないけどが出ていた。おそらく、何かの式典だったのだろう。しかし、まったくもってカトリックに疎い私たちは、ベネディクト16世は、スターウォーズの暗黒卿と似ているとか何とかでネットに画像が出回っていたよなぁ~、とかまったくもって失礼な話題で盛り上がり、おばちゃんはその間にももくもくとエンパナーダスを作っていた。


ででーんと目の前に運ばれてきたのは、特大のエンパナーダス。私が知っていたエンパナーダスは、パイ状のパンのようなものだったので、オアハカで「エンパナーダスだよ、これ」と紹介されたものがトルティージャだったときには驚いた。初めて食べたそれは、ここのおばちゃんのやつほど焼かれていなくて、もっと白い仕上がりだった。それもおいしかったけれど、ここのエンパナーダは皮がパリッとなるまでしっかりと焼かれていて(半揚げられたような感じ)炭火でじっくりと焼かれているので外はパリッと香ばしく、中もしっかりと火が通っていてあたたかい。付け合せのラディッシュが花の形になっていて、これがかわいいだけではなく、食べやすいという実用を兼ね備えた切り方であることに感動。

私たちが舌鼓を打っている間にも、ひっきりなしにお客さんがやってきては、持ち帰りで買っていった。ちょうど日曜日だし、お昼ご飯は簡単に買ってすましましょう、ということなのかなとか、日本でコロッケとかを買って帰る感覚なのかな、とかいろいろ想像した。不思議なもので、日本以外のところにいると、そこで起こった出来事を日本のシーンに置き換えて考えてみようとするくせがある。

食べ終わっておばちゃんたちと話していると、家族経営だということで、お店を手伝っていたのは全員娘さんだそうだ。あまりにもすてきな家族だったので、「写真を撮らせてください」と頼んでみると、「恥ずかしいからいい」というようなことを言われた気がして、店を後にしようとすると、

「写真撮っていってよ!!」

と呼び止められた。いやん、めっちゃうれしいやんか!!と、せっかくなのでみんなで写りたかったからテーブルにカメラを置いてセルフタイマーを合わせる。それがうまくみんなに伝わらず、ボタンを押してからみんながどっかに用事に行ってしまうもんだから、

「うわーーー!!!早く!!早く!!」

とてんやわんやで、みんなで大笑い。最後に、「日本では、写真撮るときにこうやってピースマークをするんですよ!!」と教えて、ピースマークで写真に応じてもらった。やっぱり、外国の人が総出でピースマークをしていると、なんか不思議な感じがする。



写真を現像したらまた届けにいかなあかんなぁ。楽しみだ。

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