この間、バスに乗った。
待合所で待っていて、しばらくするとバスが来た。「おおっ」と驚いてしまったのは、そのバスが真新しくてなんだか日本とかを走っていそうなくらいシュッとしたやつだったからである。
普段見かけるバスよりは1回りくらい小さいのだが、フロントガラスには行き先を示す電光掲示板。中に入ると、白いシャツに黒いズボン、そう、制服らしきものに身を包んだ運転手がいた。内装ももちろん美しく、いすはどれもしっかりとついているし、しっかりと固定された黄色い手すりだって輝きを放つくらいに新しい。
乗り込むときに見たバスの車体に"Pueblo Magico Mitla"と書かれてあったのを見た。メヒコにはプエブロマヒコというプログラムがあり、魔法がかかったように美しく、文化的な価値もある政府認定の村や町のことを指す。メヒコの観光事業の一環で、選ばれた街には観光がより普及してたくさんの人に来てもらえるように様々な整備がされるらしい。ミトラが選ばれたのはつい最近のことで、バスが新しくなったのもその影響だと思われる。
確かにメヒコの2等バスはやたら古いものが多く、エアコンなどもないので窓を開けることになるのだが、開けたら外から謎の水が降ってきたり、すわり心地が悪いなと思って椅子に腰掛けるベストポジションを探しているうちにぽろっと座席が外れてしまったりと、なんだか古さというかぼろさというか、そういうのがすでに特徴ですらある。そんな車体ばかりが走っていた路線のバスが、ブランニュー、つまり新品になったのだ。
目を疑ったのはもちろんのこと、座席に腰を下ろしてなんだかそわそわしてしまった。これなら観光客の外国人でも気軽にバスに乗れるよな、うん、うん、と辺りを見渡した。エンジンをかけて鍵を指したまま運転手がどこかに消えたかと思ってしばらく待っていると帰ってきて、バスはオアハカ市内に向けて走り出した。
走り出してすぐに高速道路のような道を走るのだが、爆音でメヒコの曲がかかっている。ミコラソン~~(私の心)とか叫んでいるタイプのメヒコ定番ソングのようなやつである。車内は程よい風が抜けて気持ちがいい。
え、かぜ??
ふと我に返って入口を見てみると、乗車口のドアが全開のままである。それで高速道路をいいスピードで走るもんだから、気持ちの良い風が車内を駆け抜けているのであった。そして、爆音に紛れて「ぴーぴーぴーぴー」とビープ音がなっているのに気がついた。
おそらくその新しい車体のバスは最新型で、ドアがあいているだとか、シートベルトを締めていないだとかで安全に問題があることを知らせるためピーピーと異常を知らせてくれていたのだと思う。
一向に気にするそぶりを見せず、なんならうるさいなぁ、とばかりにボリュームをあげる運転手。
その様子を見て、「ああ、ここはメヒコだ」と激しく再認識させられた。
日本を走っていてもおかしくないような最新のバスにきちんとした身なりの運転手。
実のところ、それらは二度見してしまうほどに、私の目に「意外の塊」のように映った。そして動き出して、爆音がかかってドアが開けっぱなしのままぐんぐんとスピードを上げるバスに揺られて、すべてのちぐはぐさをどう理解したらいいのだろうと戸惑ってしまった。いや、むしろそこにメヒコを感じてしまった自分に笑ってしまった。
新しいバスが導入されることも、制服が制定されることも、いいことだと思う。安全性は上がるだろうし、きちんとしている感じがする。
でもこのまま「きちんとした」(日本人の感覚でいうところの)感じになってしまったら、それはなにか悲しい気がする。じゃあ、バスのドアがあきっぱなしで、運転手が普段着のような格好で鼻歌を歌いながら、たまにエンジンをかけたままどっかに飲み物を買いに走ってしまうような状態が乗客として乗るときにベストなのか、安全なのかと聞かれたら、それは即答で「違う」と答えられる自分もいる。
唯一はっきりと分かったのは、制度としくみが上から導入されたけど実際にそれを扱う現場の様子(導入はしたけど、あくまでも今までのスタイルも崩さない。着地点はまさかの従来寄り!!)、そしてなによりそのちぐはぐさに動じない利用者たちをみて、「あかん、めっちゃおもろい」と感じてしまった自分がいたということである。
1分や30秒のずれも許されない日本社会と、どこまでもおおらかなメヒコ社会。どちらがいいのかを明言するのは、難しい。
待合所で待っていて、しばらくするとバスが来た。「おおっ」と驚いてしまったのは、そのバスが真新しくてなんだか日本とかを走っていそうなくらいシュッとしたやつだったからである。
普段見かけるバスよりは1回りくらい小さいのだが、フロントガラスには行き先を示す電光掲示板。中に入ると、白いシャツに黒いズボン、そう、制服らしきものに身を包んだ運転手がいた。内装ももちろん美しく、いすはどれもしっかりとついているし、しっかりと固定された黄色い手すりだって輝きを放つくらいに新しい。
乗り込むときに見たバスの車体に"Pueblo Magico Mitla"と書かれてあったのを見た。メヒコにはプエブロマヒコというプログラムがあり、魔法がかかったように美しく、文化的な価値もある政府認定の村や町のことを指す。メヒコの観光事業の一環で、選ばれた街には観光がより普及してたくさんの人に来てもらえるように様々な整備がされるらしい。ミトラが選ばれたのはつい最近のことで、バスが新しくなったのもその影響だと思われる。
確かにメヒコの2等バスはやたら古いものが多く、エアコンなどもないので窓を開けることになるのだが、開けたら外から謎の水が降ってきたり、すわり心地が悪いなと思って椅子に腰掛けるベストポジションを探しているうちにぽろっと座席が外れてしまったりと、なんだか古さというかぼろさというか、そういうのがすでに特徴ですらある。そんな車体ばかりが走っていた路線のバスが、ブランニュー、つまり新品になったのだ。
目を疑ったのはもちろんのこと、座席に腰を下ろしてなんだかそわそわしてしまった。これなら観光客の外国人でも気軽にバスに乗れるよな、うん、うん、と辺りを見渡した。エンジンをかけて鍵を指したまま運転手がどこかに消えたかと思ってしばらく待っていると帰ってきて、バスはオアハカ市内に向けて走り出した。
走り出してすぐに高速道路のような道を走るのだが、爆音でメヒコの曲がかかっている。ミコラソン~~(私の心)とか叫んでいるタイプのメヒコ定番ソングのようなやつである。車内は程よい風が抜けて気持ちがいい。
え、かぜ??
ふと我に返って入口を見てみると、乗車口のドアが全開のままである。それで高速道路をいいスピードで走るもんだから、気持ちの良い風が車内を駆け抜けているのであった。そして、爆音に紛れて「ぴーぴーぴーぴー」とビープ音がなっているのに気がついた。
おそらくその新しい車体のバスは最新型で、ドアがあいているだとか、シートベルトを締めていないだとかで安全に問題があることを知らせるためピーピーと異常を知らせてくれていたのだと思う。
一向に気にするそぶりを見せず、なんならうるさいなぁ、とばかりにボリュームをあげる運転手。
その様子を見て、「ああ、ここはメヒコだ」と激しく再認識させられた。
日本を走っていてもおかしくないような最新のバスにきちんとした身なりの運転手。
実のところ、それらは二度見してしまうほどに、私の目に「意外の塊」のように映った。そして動き出して、爆音がかかってドアが開けっぱなしのままぐんぐんとスピードを上げるバスに揺られて、すべてのちぐはぐさをどう理解したらいいのだろうと戸惑ってしまった。いや、むしろそこにメヒコを感じてしまった自分に笑ってしまった。
新しいバスが導入されることも、制服が制定されることも、いいことだと思う。安全性は上がるだろうし、きちんとしている感じがする。
でもこのまま「きちんとした」(日本人の感覚でいうところの)感じになってしまったら、それはなにか悲しい気がする。じゃあ、バスのドアがあきっぱなしで、運転手が普段着のような格好で鼻歌を歌いながら、たまにエンジンをかけたままどっかに飲み物を買いに走ってしまうような状態が乗客として乗るときにベストなのか、安全なのかと聞かれたら、それは即答で「違う」と答えられる自分もいる。
唯一はっきりと分かったのは、制度としくみが上から導入されたけど実際にそれを扱う現場の様子(導入はしたけど、あくまでも今までのスタイルも崩さない。着地点はまさかの従来寄り!!)、そしてなによりそのちぐはぐさに動じない利用者たちをみて、「あかん、めっちゃおもろい」と感じてしまった自分がいたということである。
1分や30秒のずれも許されない日本社会と、どこまでもおおらかなメヒコ社会。どちらがいいのかを明言するのは、難しい。
おっかしいですね。それにしても、最近綺麗なバスがでてきたと私も思っていたところでした。
返信削除この運ちゃんの話を読んで、昔、発動中の救急車が、サイレンつけずに、渋滞に巻き込まれてイライラしているところをみたのですが、そのルーフに乗ってるサイレンは飾りか?「サイレンつけろよ!」と突っ込んでしまいました。
たのしいですよね、メキシコ人。彼らはきっと長生きするわぁ~。
>>Patagonianさん
返信削除ね~、きれいですよね、バス。
そして、ツッコミどころ満載な感じは技術やシステムごときでは揺るがないんだなぁ、と色々な日々の出来事を通して痛感しています。笑