オアハカに回転寿司屋現る。

「寿司」

海外にいるとたまにつぶやきたくなる言葉である。いや、嘘である。今や「SUSHI」は世界的に知られたジャパニーズフードであり、メヒコにも寿司屋らしき店はたくさんある。

ある日、友だちが回転寿司屋の動画を送ってきた。確かに寿司がくるくるとレーンを回っているのである。場所を聞くとなんとオアハカだという。

これは調査に向かわねば、ということでのこのこと出かけてきた。

新しいお店らしく白木で統一されたさっぱりとした店内はおしゃれな印象で、真ん中に寿司レーンがあるではありませんか!!


この寿司レーン、どうやら下に磁石が入っているらしく静かに白い台が回っていた。

メニューは巻きずしと串カツとデザートのラインナップ。串カツとすしを頼むことにした。私はせっかくなので串カツはメヒコっぽいやつにすることにした。プランテーン(プラタノマチョ、でかいバナナ)とチーズの串揚げ、日本では見かけへんやろうけどこれはおそらくうまいであろうと予想した。友だちは、エビとチーズの串カツを頼んだ。

しばらくすると串カツがやって来て、意外なことにプランテーンの方がおいしかった。エビは串カツというよりも、もはやただの揚げ物となっていた。

さて、レーンの方だが一向に大量の寿司が回る気配がなく、たまにてんこ盛りの巻き寿司の皿がくるくると回っていて閑散としていた。

「あれ、おいしそうやな」

と言いながら寿司を見学する友だちと私。そのおいしそうと話していた寿司が私たちの前を通り過ぎるころに、店員さんがすっと歩み寄ってきて、

「この寿司は、あなたたちが注文したものです。取ってください」

と声をかけてくれた。

!!!

そういうシステムなん?!なんか、ちょっと日本の回転すしの仕組みとちゃうけど、取れというなら、取ろう!!


流れていく寿司を無事にキャッチ。しかし、写真を撮りそびれたのでもう一度台に戻して撮影。規格外の寿司の量。

私が頼んだのは、中にサーモンとフィラデルフィアが入っていて(きゅうりは抜いてもらった)、周りを海苔の代わりでアボカドでまいてチポトレというソースがかかったものにした。

日本の寿司とはあまりに違うので、「なんだそれー」という感じかもしれないが、これがおいしかった。ごはんもおいしくてボリューム感もずっしりで満足。

友だちもサーモンやら何やらが入った寿司を頼んでいてそれもおいしかった様子で、せっかくなのでなんか究極にメヒコっぽいやつを頼もうということになった。

タサホ(牛肉)、チョリソー、チーズが中に入っていて、海苔の代わりにトルティージャでまいた寿司がメニューにあったのを見つけたのでそれにすることにした。上にはワカモーレのトッピング付きである。海苔はおろか、ご飯すら入っていないこの「巻き寿司」は、なんというか、「ブリトー」っていうんじゃないだろうか?!というツッコミどころが満載で、どんなのが来るのかどきどきさせられている時点で、すでにこの店のとりこになっている気がする私たち。


もうシステムも熟知しているので、職人さんが台においてくれる寿司を真剣に見つめた。今度は職人さんが「流しますよ」と合図をくれる。

手渡しでもらった方がスムーズで速いのは全員がわかっているけれど、あえてレーンに流して一周回ってきてからキャッチという店のウリでもあるエンターテインメントをキャッキャと楽しんだ。ああ、いい客だなぁ、我々。


バレンと皿のサイズだけが回転ずしという感じ。一皿に巻きずし一本分はいっているので、せいぜい一人1皿半くらいしか食べられない。

総評は!!というよりも、普通に楽しかったしおいしかった。むしろ日本との仕組みが違いすぎて、友だちに「日本はこういう感じやねん」というのを教えてあげながら食べたので、友だちは日本の文化を学んだと思うし、私はメヒコ人の知恵と工夫を学んだ気がする。

レストランの移り変わりが意外と激しいオアハカなので、どうかこの寿司屋が店の名*のごとくその激戦に勝ち残ってくれますように。

*ちなみに店の名前は「ZUTTO」。メヒコではZはS行で発音するので彼らが発音すると「スット」と聞こえる。確かに、「あれ、あなたたちの寿司ですよ」とスッと教えてくれたよな。


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