久しぶりにトラコルーラに行ってきた話。

今週末は、サンマルコストラパソーラという村で第3回の陶器フェスティバルが開催されている。サンマルコスは本当に小さな村で、オアハカの市内からたどり着こうと思ったらまずはバスでトラコルーラという町に行き、そこから乗り合いタクシーに乗っていかなければならない。

オアハカには緑の陶器、黒い陶器、赤い陶器、オレンジの陶器など村ごとに特色のある陶器がある中で、赤い陶器が私は一番好きだ。ごつごつとしているのだけれど、使い込むほどにつやが出てきて時間をかけて自分の生活の一部になってくる感じがとても気に入っている。そんな赤陶器の村で陶器祭りがあるというので行く気満々で家を出た。


トラコルーラは日曜日に大きな市が立つのでその日もたくさんの人でにぎわっていた。まずはテハテというカカオの飲み物を飲んでエネルギーチャージ。

おばちゃんが、「あら、あんた久しぶりに来たんじゃないの?!」と声をかけてくれて和む。このおばちゃんのテハテはほんまにおいしい。


ザ・犬小屋、と絵にかいたような犬小屋が売っていた。「めっちゃ犬小屋ですね」と訳の分からないコメントをすると、おっちゃん苦笑い。そらそうや。


市場の中は人が多いしなとかうろうろした挙句、少し離れたところでメメラを食べることにした。人が食べているのを見ているとおいしそうに見えるので、「あの人と同じものを」方式で注文。

トルティーヤ部分が靴のような形で少し厚めに焼かれていて、アシエントという豚の油、フリホール(黒豆)のペースト、ケシージョ(チーズ)がもりもり乗っていて、その上にお肉をのせて渡してくれるので、その上にピコデガジョというトマトと玉ねぎとパクチーのサルサとワカモレをもりもりかけての出来上がりが、上の写真。実物はもっとおいしそうに見えたのに、写真ではそこまでおいしそうではないのが残念。

ぶ厚め焼かれた手作りのトルティージャがめちゃくちゃおいしくて、一心不乱に食した。素朴だけどめちゃくちゃおいしかったので、トラコルーラに来た時の定番にしようと思った。

隣に座っていたおっちゃんが英語で話しかけてきた。(ここまではよくあるシーン)すると、アメリカで30年ほど働いていたのだと言った。

日本人と一緒に働いていてね、とすし職人・鉄板焼き職人として働いていたことを教えてくれたおっちゃん。一番最初はてんぷらをやっててね、とカリフォルニア時代の話をいろいろと教えてくれた。

そしてしきりに「日本人と働けて本当に良かった!!」と言ってくれて、めっちゃうれしくなった。そして、「日本人に本当に世話になったから」と言って私の食べた分をごちそうしてくれるという。「私は今会ったばっかりやしええよ、ええよ!!」と必死で断っても「いや、でも日本人へ敬意を払いたいんだ!」と譲らないおっちゃん。

結局「ありがとうございます」と甘えてごちそうになってしまったけど、おっちゃんは本当に日本人と働けたことを感謝してくれていて、私はその人たちのことを直接知らないけど、自分の国の人たちが海外で一生懸命働いて、その人たちがまた別の国から働きにやってきた人たちにやさしくして、その優しさがまわりまわって私のところまでやってきたのだと思うと、なんだか感激ししてしまった。

おっちゃんは今はオアハカに戻ってきたけど、息子さんたちが今もアメリカで日本人たちと働いていて、おっちゃん自身も家で寿司を作ったりカレーライスを作ったりして日本の食文化をいまだに楽しまれているそうだ。

オアハカのさらに田舎の小さな町で、まさか「カレーライス」という言葉を連発して地元のおっちゃんと会話をするという全く予想しなかった展開に興奮した。何が起こるかわからへん人生のアドベンチャー部分は突如やってくるから面白い。結局陶器祭りには足を運ばずじまいだったけどそんなことはもはや重要ではない。

おっちゃんがくれたものはメメラだけではなく、日本人であることを誇らしく思わせてくれたことであり、優しさの連鎖をつないでくれたという間接的な文化交流だと思う。次につなげられるように、備忘録までに。



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