テキスタイルミュージアムに行った話

この間、テキスタイルミュージアムに行ってきた。ちょうどオープニングの日だったのだが、宴の終盤という雰囲気が漂っていた。もう少し早く到着していれば何かセレモニー的なものが見られたり、スナックなどにもありつけたのかもしれない。

テキスタイルミュージアムの展示はいつもびっくりするような作品ばかりがずらりと並ぶが、今回の作品群もまたすごい。第1室は刺繍の作品だったが、その細かさたるや。



ふさわしくない言葉と承知の上で言うならば、もはや狂っているといっても言い過ぎではないような、それくらい細かい仕事ばかりが展示されている。手仕事というのは、自分でやってみないとなかなかその大変さがわからないと思うけれど、これは一目見ただけでものすごい時間をかけられて作られたものだということがわかる。

ど、どうなってんだ?!

この気の遠くなる感じの作品を目の前に、ただため息が漏れるばかり。気が付いたらより近くで見ようと壁に顔を近づけすぎて、いかんいかんとはっと我にかえる。




その他の部屋では織物やウイピルの展示。腰織の作品や機械織の作品が並ぶが、これらもため息ものだった。特にタペテの色づかいに魂を持っていかれるかと思った。作品の詳細が見当たらなかったので、ものだけを見たのでいつの年代のものかはわからないのだけれど、お店などで見かけるのとは違った色づかいで、特にピンクや緑がバッキバキにきまっていた。

クロスステッチ。嘘やろう?!

私の母が編み物を習っていて、この間日本に帰った時に「これ提出するねん」と見せてくれたセーターの模様が細かくてすごいと思ったけど、色の合わせ方をああでもない、こうでもないといろいろ悩んでいた。たくさんの色を同じ場所に無理なく存在させるって本当にすごいことだと思う。オアハカの民芸品は、木であろうが布であろうがたくさんの色が使われている作品が多いけど、作っている様子を見たら迷う様子も見せずちゃっちゃかちゃっちゃかと手を動かしている印象を受ける。もちろん経験上、頭の中にたくさんの色の組み合わせが入っているとは思うが、いったいどういう色彩感覚なんだろう、と感心するばかりだ。

このブラウス、作り凝ってるー!

このテキスタイルミュージアムに展示されているものは、いったい誰が誰のために作ったものなのだろうと思いをはせた。ただの時間つぶしや、売り物にするだけにするにはあまりに細かい作業だと思う。やはり、自分やあるいは家族の誰かが使うように作られたのだろうか。

以前、中国のミャオ族の民族衣装について研究されている方がオアハカにいらっしゃったときに通訳のお手伝いをしたことがある。その時いただいた本はミャオ族のいろいろな民族衣装がのっていて、決まった一つの型というものがなくこんなにもバラエティ豊かなんだなぁと感心していたら、そもそもはそれらの衣装は自分の子供たちのために作られているものなのだという。だから、彼らが生活の中で着ている衣装は愛情がたっぷり詰まった本当に特別な服なのだ。そりゃあ、その辺で売られている商業用に作られたものの中にはないのも納得だ。
ポンポンの使い方がなんかいい。

テキスタイルミュージアムで展示されているコレクションは、そういうものが多いのだろう。いつも作品が話かけてくるような気がする。中には使われてきたようなものもある。でもそこから感じるのは作り手のていねいな仕事ぶり、根気と愛情である。
胸のワンポイント。ツーポイント??

デジタルと手作業が入り混じる時代に、本当に素晴らしい手作業を見せられるとやっぱり人間のマンパワーはすごいと思わせられる。どんな気持ちで作られたのかとか、どれくらいの時間が費やされたのかとか、どのようなことを考えながらそういうデザインにしたのかとか、見る力や想像する力が見る側も必要なんだろう、と思う。私の友だちには織物や染色、布にかかわる仕事をしていたり、好きな人が多いのでこの展示をぜひ生で見てもらいたいのになぁ、と思いながらテキスタイルミュージアムをうろうろする私だった。せめてできるのはデジタルパワーを使って情報を発信することだ。

やっぱりなんでも大事なのはバランスなのだな、という気付きを締めとして。

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